#06 誰も知らないあなたの顔
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「ルソーって知ってるか?」
「えと、哲学者の…」
無表情でパソコンを凝視する二人を見やり、征陸さんに視線を戻す。
「そう。その著作の[人類不平等起源論]。」
「ちょっと待って下さい、検索してみるんで…」
「その必要はない。」
目を瞬くと、その皺の刻まれた顔に悪戯っぽい笑みが浮かんだ。
「俺の脳内には記憶されてる。例えば」
二本のスピリットが義手によって掴まれ、カチン、カチンと音をたててそれぞれ離れて机に置かれる。
「例えば二人のハンターがに森にいる。それぞれ別にウサギを狩るのかそれとも…」
そしてさらに、もう一本。
「二人で協力して大物を狙うか。どちらが正しい判断だと思う?」
「勿論後者です。ゲーム理論の基本、協力して大物。」
「その通り、それが人間の社会性だ。」
『すいません征陸さーん、声が大きすぎて耳が痛いですー。』
パソコンの向こうから届いた棒読みの発言に、思わず笑う。
「言葉、手紙、通貨、電話。この世に存在するありとあらゆるコミュニケーションツールは全てこの社会性を強化するためのものだ。ネットにその効果はあると思うか、お譲ちゃん。」
「ある…と思います。」
それは本心から出た言葉だったけれど。
例えないにせよ、やっぱり自分はネットを使うだろう。
それはなす為の手段ではなく、ただそこに、在るから。