#01 犯罪係数
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「対象は、大蔵信夫。」
ホロ展開された画面に顔写真と共に映し出される、ある数字。
126.3と明記されたそれに軽く首を回す。
「街頭スキャナで色相チェックに引っかかり、セキリュティドローンがセラピーを要求したが拒絶して逃亡。記録したサイコパスはフォレストグリーン、高い攻撃性と強迫観念が予想される。」
「そんなに色相が濁るまで治療を受けなかったなんて…」
隣で言葉を濁した同期は、何故か沈痛そうな表情を浮かべている。
「不適合薬物に手を出した可能性もある。何にせよ、シビュラ判定を待つまでも無い潜在犯だ。」
見上げた眼鏡の奥の切れ長の瞳が、訝しげに細められる。
「どうした…佐々山。」
微妙な間を挟んで呼ばれた名に首を振り、口を開く。
『いえ、すみません。続けて下さい。』
視線をさり気無く前方の明かりにやると、その顔も肩越しに同じ方を向く。
「厄介なのは、大蔵が逃げ込んだこの区画だ。」
雨に霞んだ安っぽい蛍光色で彩られた無数の看板が、大昔の上海や香港を思い出させる。
それも、決して旅行パンフレットに載らないような。
「廃棄区画で中継点が無いため、ドローンが進入できない。それともうひとつ…」
『逃亡の途中で大蔵は、通行人を拉致。』
「人質が…!?」
「目撃者の証言によれば、若い女性だそうだ。身元の確認はまだ取れていない。」
つぶらな瞳に正直な怯えを浮かばせながら背後を振り返るのを見ながら、小さく息を吐く。
配属初日からいきなりこんな修羅場とは、つくづくツイていない。