#32 完璧な世界 後編
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走りながら目を落とした、この日の為に用意したホロじゃない、本物のスーツ。
<こちらは、公安局刑事課です。>
すでに色の変わっているそれにげんなりし、ほぼ自棄でパシャパシャと水を蹴るように進む。
「何々?」
「さぁ?」
<現在この区画は、安全のために立ち入りが制限されています。近隣住民の皆さんは、速やかに退去して下さい。繰り返しお伝えします――>
「あの!」
飛び込むようにして入ったテントの下で、二人の女性が振り返る。
一人は活発そうな短い髪にスカートだけど、どこかあどけない。
一人は緩くくせのついたロングヘアにスカートとフェミニンなのに、意外と目つきが鋭い。
「監視官の常守さんに…佐々山さんですか?」
「ええ」という応えに足を揃え、敬礼する。
『配属早々に事件とは、災難だねー。』
「本日付で刑事課に配属になりました、霜月美佳です。宜しくおねがいします。」
「悪いけど、刑事課の人手不足は深刻なの。フォローはするけど新米扱いは出来ない。」
「承知しています、望むところです。」