#32 完璧な世界 後編
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ほぼ真四角に切り取られた空を仰いだ瞬間、頬の上を流れていく雫。
吊り下げられた洗濯物の間から顔を覗かせている巨大な塔を見ながら、買ったばかりのコーヒーを傾ける。
「光ちゃん!」
かけられた声の方を振り向いて軽く手を上げ、見慣れたKの後部席へと身を滑り込ませる。
『Hello、お二人さん。お墓参りは無事終りょ「佐々山」
きっと睨みつけられ、思わず身を引く。
「お前一体、何度言えば分かる?廃棄区画を一人でウロつくんじゃない。」
「まぁまぁ宜野座さん。」
朱ちゃんの宥める声にも耳をかさず、視線を逸らさないのをとりあえず見返す。
『…あ。コーヒー飲みます?』
「廃棄区画で買ったコーヒーなんて飲めるか!」
『え?大丈夫ですって。こういうところのご飯が美味しくて特に害がないのは一般人時代にすでに検証済みですから。』
「お前が一般人だった時代なんてせいぜい1週間やそこらの話だろ…ちょっと待てお前まさか、まだIDも配布されていない身分でこんなところをウロついてたのか!?」
「ま、まぁまぁもう時効というか何というか…。」
ややあって香ばしい匂いが車内を満たし始めた中、シートに背中を預ける。
『新任の監視官、明日には着任するんでしょ?』
「異例の人事だよね。未成年の登用なんて。」
リングを起動させて見たデータにホロ投影される、見た顔。
「俺達にも、責任の一端はある。」