#32 完璧な世界 後編
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「手間をかけさせてすまない。」
控えめな桜吹雪にさらしていた体を、浮かせる。
「いえ。執行官の外出に同伴するのは、服務規程ですから。」
ふっ、と少し困ったように笑うその様は今は亡い仲間に、彼の父によく、似ている。
「…ああして墓があるだけ、縢よりはマシだ。」
「二係の調査、打ち切られたんだろ」と続いた言葉に、頷く。
「ええ…。」
覆面パトカーに乗り込むと同時にAIが起動し、目的地へと進路を執る。
「きっと縢は、もうこの世にいない。上層部はその確証を掴んだ上で発表せずに有耶無耶にしてる。」
「……狡噛さんは、どこにいるんでしょうね。」
「あれだけ獰猛な猟犬から首輪が外れたら、それはもう狼と変わらない。寧ろ野生に戻った分、伸び伸びとやってるかもしれん。」
「そんな、気楽なものでしょうか?」
「執行官だった頃のアイツが、気楽にやってたワケでもないだろ。…しぶとくて、狡猾で。諦めの悪い男だった。どんな過酷な状況だろうと、アイツはきっと切り抜ける。寧ろ心配なのは、常守監視官。貴女の方だ。」
「ぅえ、私?」
控え目に観察するような視線をミラー越しに認め、苦笑する。
「相変わらず心配性ですね、宜野座さんは。」
「…過去よりも未来に目を向けるか。」
「ですね。というワケでそこの高架下の廃棄区画にちょっと寄っていいですか?光ちゃんを拾いま「ちょっと待て。それは一体どういうワケだ。」