#32 完璧な世界 後編
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「やぁ、久し振り。」
なんだかまるで全時代のアパートのような、共同墓地。
その極々低層階に、その墓はある。
「今日は報告に来た。身の振り方を決めたんでね。」
膝をついたその墓前にウイスキーの瓶が供えられているのに気づき、苦笑する。
そんな朝早くから奥多摩の山奥になんて行きたくないと言っていたのに。
「犯罪係数、140までいったよ。もう回復の見込みはない。だが隔離施設で腐っているのも性に合わなくてね。結局、古巣に戻る事にした。」
まだ深夜とも言える時刻に始めた今日はもう、陽が高い。
「違う道に進めとアンタは言ったが、ご期待には添えなかったワケだ。どこまでも親不孝な息子で…」
すまないという謝罪を心の内で呟いて伏せた目に今度はカップ酒とそして、見慣れぬキーが映る。
「でもな、不思議と後悔はしてないんだ。刑事なんてロクなモンじゃない…。それでも、誰かが引き受けないとならない仕事だ。そうだろ?……親父。」
それに、と馬鹿デカイ”王将”の駒の玩具の位置を整えながら、息を吐く。
「まだまだ危なっかしくて、目が離せないんだ。」
一人は兎も角としてもう一人は、本当に。
よく、知ってるだろう?
馬鹿らしい事にアレの面倒を看る事も、今の自分の為すべき事のひとつだと、思うんだ。
そんな事を言ったらアンタはきっととても愉快そうに声を上げて、笑うんだろうな俺を。
「………」
もう一度黙祷しややあって、膝を伸ばす。