#32 完璧な世界 後編
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拘束具めいた妙なチョーカーを嵌められた光ちゃんの横顔から、目を戻す。
<短期的戦略としての隠蔽工作は現状ではまだ容易ですが、長期的視野に立った場合、これは決して望ましい方針ではない。いずれ我々は、偽らざる姿を公の物とするべきなのです。全ての市民が、シビュラの正体を認識し、了解した上で我々による統制を享受するようになる環境を整える事。この課題の達成は、将来の人類社会により盤石の安定と繁栄をもたらす事でしょう。>
握り締めた拳が勝手に、震え出す。
ゆき…縢くん……
征陸さんそして――
「――…。」
すべらかで暖かな掌の感触に思わず吐いた息で、自分が呼吸を止めていた事に、気づいた。
<我々が、引き続き貴女の動向を観察し解析する事は、未来の市民を懐柔し順応させる方法論を構築する貴重な手掛かりとなるのです。>
「そんなに上手くいくと思ってるの?」
<機密保守を脅かす兆候がない限り、貴女方の生命と行動の自由は保証されるでしょう。協力的態度を期待します。自己保存の欲求に従えば、選択の余地はない筈です。>
「…そうね。犬死はご免だし、今の世の中がシビュラ抜きでは成り立たないのも事実だし。」
<貴女の遵法精神に基づく判断は、信頼に値します。>
皆が
私達が、あの人が一体どんな想いで
あの時を、あの一瞬を
今を、生きているのか知りもせずに。
噛み締めた奥歯が音を立てて、鳴いた