#32 完璧な世界 後編
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<槙島聖護の身柄確保については、大変遺憾な結果となりました。>
「これで私は用済みって事?」
自然光に慣れた目にここの明りは、眩しすぎる。
ふっと視線だけを向けて前へと向き直り、「私達は」と言い直した朱ちゃんの体のあちこちには包帯が巻かれている。
<常守朱、及び佐々山光の能力評価については下方修正を余儀なくされます。が、それによって貴女方の存在価値がマイナスに転じるわけではありません。寧ろシビュラシステムの運営上、貴女方は依然として、特出した価値を持つ個人です。>
『…どういう意味よ。』
<貴女に関して言えば、佐々山光。後天的免罪体質というのは言わば暫定的な名称であり、区分です。貴女に起きた現象は近い将来、この社会を構成する全人類に起こり得る変異であり、進化なのかもしれない。であれば我々は引き続き貴女の動向を観察し且つ、その存在を定義付ける必要があります。誤解を恐れずに言えば、貴女のような人間がもしも脅威となった場合の対象方をも検討せねばならないでしょう。>
『脅威、ね。』
ちょうど顎の下辺りを触れば小さな硬貨のような手応えがあり、首を一周するビロードのような感触が伝わる。
不安気にこちらを見つめる朱ちゃんに口元を緩めるが、ちゃんと笑顔になっていたかどうかには自信がない。
<常守朱。貴女の健康且つ強靭なサイコ=パスと明晰な頭脳、判断力は、来るべき新たな市民に示す指標として充分な理想型と言えます。そして、貴女はシビュラシステムに対し、完全に相反する感情的反感と理論的評価を抱いており、今尚その葛藤は継続している。そんな貴女を懐柔する手法を確立出来たなら、我々は、社会の統制を次の段階に進める上で貴重なサンプルデータを獲得出来る事でしょう。>
「…何を企んでいるの?」
<目下の所、世論の情勢を鑑みて、シビュラシステムの実態は完全に秘匿されています。>
それはどうだろうとは思ったが、口には出さない。
私はまだ
終わりなんていらない。