#31 完璧な世界 前編
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深淵まで届く苦い、香り。
さっきの1本が思い出されて揺らめいて、遠くなる。
定まらない思考の中で開けた目に射す影は大きくて、暖かくて。
『……こ、がみさ……?』
低い笑い声が降ってきて、大きな掌が頬を撫でる。
「デコンポーザーはないだろお前。常守だって怒るぞきっと……いくら何でも。」
ネクタイを掴んだつもりの腕が逆に引っ張られて、引き寄せられる。
『…どうして…アタシっ…アタシなら…――なのに…―…っ』
強い煙草の香りが狡噛さんのものなのか自分のそれなのか、分からなくなる。
アタシなら、良かったの。
ぎゅうっと強い力で抱き締められた広い胸から響く音に
出来たの。
伝わってくる震えを私は結局、どうしてあげる事も。
薄くて熱いその唇が、私に触れる。
ねぇなのに
「……言ったろ。」
出来なかったの。
境界の色がアタシだけを一杯に映して、緩む。
どうしてなのこんなに貴方が
「俺のせいにして、いいって。」
貴方が。
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