#31 完璧な世界 前編
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点々と続く血痕を追って辿り着いたのは、ターミナルエリア。
シャッターの向こうに黄昏に満たされた、農地が覗いているのが見えた。
「「………」」
整然と並ぶウィルス出荷用のコンテナ群の間を縫って、進む。
暗がりに残されたまだ新しい血の跡を確かめながら、慎重にその距離を、詰めていく。
「アンタがどうあっても槙島を殺さないのは…」
「違法だからです。犯罪を見過ごせないからです。」
「悪人を裁けず、人を守れない法律をなんでそうまでして守り通そうとするんだ。」
無残に殺され、奪われていった命。
本来ならば守れる筈だった、守られてしかるべきだった命。
裏切られたのは、死んだ誰かだけじゃない。
「法が人を守るんじゃない。人が法を守るんです。」
断固とした口調でそう言い放った常守が、目を伏せる。
「これまで、悪を憎んで正しい生き方を捜し求めてきた人々の想いが…その積み重ねが法なんです。それは条文でもシステムでもない。誰もが心の中に抱えてる、脆くてかけがえのない想いです。……怒りや憎しみの力に比べたら、どうしようもなく簡単に壊れてしまうモノなんです。だから、より良い世界を造ろうとした、過去全ての人達の祈りを無意味にしてしまわない為に…それは最後まで頑張って守り通さなきゃいけないんです。諦めちゃいけないんです。」
「…いつか…誰もがそう思うような時代が来れば、その時はシビュラシステムなんて消えちまうだろう。潜在犯も、執行官もいなくなるだろう。だが…――!?」
響いたエンジン音に間をおかずしてバックしてきた車両にほぼ同時に床を蹴り、左右に別れる。
肩をついて起き上がりざまに見えた光景に目を、見開く。
「ッ朱ぇっ」