#30 血の褒賞
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「………」
農耕ドローンの格納庫内を拳銃を構えたまま、すり足で進む。
自分の足音だけが響く広大な空間を、視界の片隅を影が、過ぎった。
発砲するが残るのは、僅かな火花と硝煙の匂いだけ。
「ハハハハッ」と愉しげな笑い声が降ってきて、視線を強める。
「ついに紛い物の正義を捨てて、本物の殺意を手に取ったか。やはり君は、僕が期待した通りの男だった。」
「そうかい。だが俺は貴様に何の期待もしちゃいない。」
「…ここまで来てつれない事を言ってくれるなよ。」
「いい気になるな!貴様は特別な人間なんかじゃない。ただ世の中から無視されてきただけのゴミ屑だ。」
身体を満たす殺意に、意志を浸す。
「たった一人で人の輪を外れて、爪弾きにされてきたのが恨めしいんだろ?貴様は孤独に耐えられなかっただけだ。仲間外れはイヤだって泣き喚いているガキと変わらない!」
「面白い事を言うなぁ。……孤独だと?それは僕に限った話か?この社会に孤独でない人間など誰がいる?他者との繋がりが、自我の基盤だった時代など、とうの昔に終わっている。」
ドローンの影にその姿を認め、狙いを定める。
「誰もがシステムに見守られ、システムの規範に沿って生きる世界には、人の輪なんて必要ない。皆小さな独房の中で、自分だけの安らぎに飼い慣らされているだけだ。」
粉々に飛び散ったガラス片に目を見張り、舌打って駆け寄る。
「……――!!!」
背後から迫ってきた気配に目を見開いた瞬間、手から銃が弾き飛ぶ。
首を刈り取るような回し蹴りを姿勢を低くしてかわし、懐に手を入れてナイフを取り出せば槙島もまた、同じ様に。
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