#30 血の褒賞
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苦い味の残る舌先と
『………』
熱に炙られた唇が少し、ヒリヒリする。
『ひとつだけ聞かせて。』
微笑んで了承を示し、先を促した槙島の顔を思い出しながら、足を踏み出す。
『何故あの時、私を助けたの。』
「別に助けたわけじゃない。僕はただ見たままを言っただけだ。」
『…you're insane.』
「こんな世界で正常で在る事にたいした価値なんてない。そもそも、その基準の前提はなんになる。全ての判断を、行為決定の全てを、システムに委託して生きる人間の引いた境界かい?」
『そう。その線を引くのは結局、私達。意志を、…意識を保持する以上それをしなきゃならない。……つまり私達が”こう”である限り、現行のシステムの完全性を達成する事は出来ないのよ。常識だって社会通念だって無くならない。価値だってそう。やっぱり…概念と観念とは、全く別モノなのね。』
刹那瞬いた琥珀色が、消え失せる。
風のさらっていった笑い声を私は多分この先、何度も思い出す事になる。
そんな予感があった。
「僕もひとつ、聞いていいかな?」
沈黙を了承と受け取ったのか、端整な顔が少し綻んだままで背けられる。
「君はパスカルが好きなのか?それとも嫌いなのか?」
何も言わないドミネーターを右手に提げたまま、約束した場所へ向かって歩き続ける。
その問いに対する答えを
私の正義を、携えて。