#29 正義の在処
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冬の空に、刷毛で塗ったような薄い雲が浮かんでいる。
海のようにさざめく一面の麦畑を渡ってくる風が、心地良い。
隣を歩く佐々山の髪が同じように吹かれるのを見て、どうしてか足取りが更に、軽くなる。
とても新鮮な感覚。
『綺麗だと思う?』
透き通ったような輝きを宿した横顔をしばし見つめ、顔を戻す。
麦の穂先が風に撫でられる度に耳に触れる、ささやかな呼吸にも似た音。
黄昏の陽を浴びた辺りに満ちる、柔らかな色。
雲間を射いて降る光が、無数の橋を地上に投げかけている。
「…………………………ああ。」
そう応えると、大きな瞳が泳ぐようにこちらを向く気配がした。
ふっと、自分の表情が緩むのを感じながらバックを担ぎなおす。
「君の思うようにやってみるといい。」
そう。
世界はいつだって本当は
行く手に聳え立つ巨大な建築物が、ひどく無粋な物のように思える。
もしかしたら。
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