#29 正義の在処
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「面白くって楽チンで、ツライ事なんて何もなかった。」
青空の下に立ったゆきが、柔らかく射す光を見上げる。
「ぜーんぶ誰かに任せっぱなしで…何が大切な事なのかなんて、考えもしなかった。」
「ねぇ朱」とこちらを向いて笑うゆきに、喉が鳴る。
「それでもアタシは、幸せだったと思う?」
「…幸せになれたよ…それを探す事はいつだって出来た……」
だってそうでしょ?
こんな世界でも、アタシ達一緒に笑ってた。
笑って一緒に生きて、いたんじゃない。
「生きてさえいれば、誰だって…!」
車内に鳴り響いた着信音に、目を開ける。
「――…はい、常守です。」
<一体どこをほっつき歩いていた。この非常時に。>
厚生省から公安局への帰り道、オートドライブで走行中である事を自分でもその問いでもって認識する。
「あぁ、えっと…局長の命令で、ちょっと厚生省まで届け物を……」
<市川で殺人事件だ。現場から狡噛の指紋が出た。……すぐに来い。>
「了解です。直ちに急行します。」
目的地へのルートを、ナビに設定。
自らハンドルを握って車線変更しつつ、助手席に視線を投げる。
沈黙を守る世界の”正義”に、手を伸ばす。