#29 正義の在処
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
カツン、カツンとまるで獲物を、いたぶるように。
ゆっくりと響く硬質な足音の出所を、見上げる。
「僕はね、人は自らの意志に基づいて行動した時のみ価値を持つと思っている。」
螺旋階段に佇む槙島の後ろに見える空は、快晴。
陽光を背負って、まるで神様か何かのように端然と在る、その姿がでも
「だから様々な人間に秘めたる意志を問いただし、その行いを観察してきた…」
ただの人間だって事を私は、知っている。
涙を拭ってそれを受け止めて、相対する事が出来る。
「…そうね。貴方の気持ち、今なら少しだけ分かるかも。」
「そもそも何を以って犯罪と定義するんだ?君が手にしたその銃――ドミネーターを司るシビュラシステムが決めるのか?」
「違うよね…。それがそもそもの間違いだった。」
いつからか私達は、”正義”を手放した。
それぞれのそれを――誰か、自分以外の何かに、明け渡してしまった。
「サイマティックスキャンで読み取った生体力場を解析し、人の心の在り方を解き明かす…科学の叡智はついに、魂の秘密を暴くに至り、この社会は激変した…。だが、その判定には人の意志が介在しない。君達は一体、何を基準に善と悪を選り分けているんだろうねぇ。」
それを決める為の信念を、自らの意志を。
「きっと大切だったのは、善か悪かの結論じゃない。それを自分で抱えて、悩んで、引き受ける事だったんだと思う。」
そうして選択したその、結果を。
「僕は、人の魂の輝きが見たい。それが本当に尊いものだと確かめたい。だが、己の意志を問うこともせず、ただシビュラの神託のままに生きる人間達に果たして、価値はあるんだろうか。」
「ないわけないでしょう!貴方が価値を決めるって言うの?誰かの家族を、友達を…貴方の知らなかった幸せを!!」