#29 正義の在処
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――後天的免罪体質者…
隣に座した佐々山に、目を向ける。
あの晩に耳にしたその単語は初めて聞くものではあったが、それ程新鮮な響きもなかった。
シビュラの認識はその正反対に位置しているらしかったが。
<目下のところ議論と判定の最中ではありますが、あの日、我々の真実を知り、縢秀星が処分されるのを目の当たりにした直後の貴女の犯罪係数は36。色相判定はペールターコイズを示していました。現在も数値は、下降線を辿っている…。この測定結果は大変興味深いものです。>
高速道路とは名ばかりの簡易で全時代的な道を行く車の助手席に座した彼女は走り始めてからずっと、開けっ放しの窓外を眺めている。
怜悧な顔立ちの女だが、すらりとした体つきや緩い癖のかかった髪は客観的に見ても主観的に見ても、女性的だと思う。
<佐々山光、貴女は今どのような目的意識を以って思考し、行動しているのですか。>
「ハハッ」
あまりにもあけすけにプライベートの開示を要求する彼等に対する彼女の返答を思い出し、一人笑う。
訝しげな視線を横目で受け止め、窓枠に肘をつく。
「僕も、君は興味深いと思うよ。」
暫くこちらを見つめていた佐々山が、ふっと顔を戻した。
『………そう。』
管巻の家を、後にして以来ぶりの会話。
沈黙の支配した車内をしばし、吹きすぎていく風の音だけが満たす。
「………僕は君に、殺されるのかな。」
それとも。