#29 正義の在処
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「馬鹿言わないで!!」
<真に完成されたシステムであれば、運用者の意思は問われません。我々、シビュラの意思そのものがシステムであり、倫理を超越した、普遍的価値基準なのです。>
「ふざけないでよ!!何様のつもりよ!!」
悲鳴みたいな罵声の後を、荒い呼吸音が乱す。
<ここにいる各々が、かつては人格に多くの問題を抱えていたのは事実です。だが、全員の精神が統合され、調和する事によって、普遍的価値基準を獲得するに至っています。寧ろ、構成因子となる固体の指向性は、偏った特異なもの程我々の認識に新たな着想と価値観をもたらし、思考を、より柔軟で多角的なものへと発展させます。>
振り上げた腕の先に在るモノが、重い。
<その点において、槙島聖護の特異性は極めて貴重なケースであり、一際有用な構成員として期待されます。あらゆる矛盾と、不公平の解消された、合理的社会の実現。それこそが、全ての人類の理性が求める究極の幸福です。完全無欠のシステムとして完成する事により、シビュラは、その理想を、体現する存在となりました。>
重たくて、重たくて。
「…何故、そんな話を私に?」
<今、貴女は我々を生理的に嫌悪し、感情的に憎悪している。それでも、シビュラシステムの有意性と必要性は否定出来ていない。シビュラなくしては、現在の社会秩序が成立しないという事実を、まず大前提として弁えている。正当性よりも、必要性に重きを置く貴女の価値基準を、我々は、高く評価しています。>
「秘密を守る為に、縢くんまで殺したくせに…!」
落ちた視線と一緒に、下げてしまう。
<常守朱は、シビュラシステムと共通の目的意識を備えている。故に、貴女が我々の秘密を暴露して、システムを危険に晒す可能性は限りなく低いものと判定しました。「舐めるんじゃないわよ。アンタなんか…アンタなんかぁッ」
咄嗟に逃げ込んだ闇の中にはだけど、何も無い。
こんなモノ認められないに決まってる。
<…再確認しましょう。常守朱。シビュラシステムのない世界を望みますか?>
私はそんなこと、したくない。