#28 透明な影
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<多様性を失った大量の単一種か。成る程、ひとつ致命的な欠陥が見つかれば、一気に全滅する可能性もある――>
電子音声をあてられた文章に、目を凝らす。
「これが槙島の次の狙いかも。」
「食料の自給か…」
「はい。この手があったかと…。農作物、生産体制…遺伝子組み換え。」
壁を埋め尽くす書棚を見上げ、片端から背表紙を目で撫でていく。
「その辺りの資料はありませんか?」
「任せろ。」
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「人口の激減とシビュラシステムの完成による、人口の都市部への一極集中は歯止めが利かなくなった…。だが人は動けても、土地は動かせない。農地における第一次産業は、最早完全自動化を余儀なくされた。」
「ドローンによる作業の機械化…遺伝子改良されたハイパーオーツと、善玉ウィルスによる疫病対策。こうして、完全無人化農耕システムが完成した事により、この国から、農業という職種は消え失せた。今では北陸全域が人口0の、巨大穀倉生産基地…。」
「もし仮に農作物の健康管理にトラブルが生じたら、単一品種のハイパーオーツは疫病によって壊滅的な被害を被る。」
カップに手を伸ばした先生が代わりに資料をテーブルに置くのを眺めながら、思考を追いかけていく。
「自給体制が崩壊すれば、日本は再び食糧を輸入しなければなりません。他国に対するコミュニケーションを拒絶していたそれを、急激に改めなければならない。」
「食料不足によって、日本国民全体の犯罪係数が上昇…。食料輸入を解禁すれば、国境警備はどうしても緩めざるを得ない。難民の流入も始まるでしょう。そうなれば、犯罪係数の測定そのものが無意味になるかも。」
「それを実現する為には…」
「専門家の力が必要です。今、槙島は…」