#28 透明な影
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「もしかしたら、ガリバー旅行記辺りも引用するかもしれない。あの男はシニカルで歪んだユーモアの持ち主です。」
「成る程?進みすぎた科学と政治への風刺として。」
「そういう男です。」
「…踏み込んだ質問をさせてもらう。君は槙島と自分が似ていると思うか?」
瞬間自身の表情が硬くなった事を自覚しながら、視線を合わせる。
「……理解できる点はあります」と正直に告白し、目を伏せた。
「槙島の過去は何もわかっていません。ただひとつ確実なのは、ヤツの人生には重大な転換点があった…。自分が特異体質だと気づいた瞬間です。自分のサイコ=パスを自在にコントロール出来る体質…それを特権だと思う人間もいるでしょう。でも、槙島は違った。」
心を幻想に少しだけ流せば、その姿が見える。
碧みがかった陽光の射しこむこのリビングで、そのテーブルについたその、横顔が。
「ヤツが覚えたのは恐らく、疎外感です。この社会でシビュラシステムの目に映らないというコトはある意味…人間としてカウントされないのと同じでは?」
「…仲間に入れてもらえなかった子ども…。成る程?案外そんな気分が槙島の原点なのかもしれないね。」
「とはいえ全ては推測です。本当のところは、本人に聞いてみるまで分からない。」
「君は聞くつもりはない。」
尋ねたところで何がどうなるというワケでもない。
自分は、変わらない。
「…はい。」
小さく息をついた先生が、食器を持って立ち上がる。
「片づけが終わったら、書斎に来なさい。面白いモノを見せよう。」