#28 透明な影
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「マックス・ウェーバーの言葉を借りれば、理想的な官僚とは憤怒も不公平もなく、更に憎しみも激情もなく、愛も熱狂もなくひたすら義務に従う人間の事だという。シビュラシステムは、そういう意味では理想の官僚的行政に近いかもしれん。」
オムレツを口に運んだその目つきが、次の瞬間鋭さを帯びる。
「ただしそれは、公表されているシビュラの使用が全て真実という前提の上での話だ。」
「槙島は電話で俺に、シビュラの正体を知ったと言っていました。お前が命をかけて守るようなものではないとも。」
「…マックス・ウェーバーからもう少し引用しよう。官僚制的行政は知識によって大衆を支配する。専門知識と実務知識、そしてそれを秘密にする事で、優越性を高める。」
「…槙島はその優越性を剥ぎ取ろうとしている。」
「そりゃあ上手くいきかけた。例の暴動で、この社会はかなりの危険ラインまで脅かされた。そして厚生省から槙島に対して、何らかの提案があった。」
「だがその提案を拒絶した。」
「フン…。一度録画か録音付きで、その槙島という男と話してみたいモンだ。」
「研究の一環ですか?」
「そういう段階じゃないな。純粋に捜査協力の為にだよ。もしこの席に槙島もいたら、どんな風に参加してくると思う?」
「アイツは…」
イメージしてみる。
今この食卓に、あの男が着いていたとしたら。
「マックス・ウェーバーを持ち出された次の瞬間には、フーコーやジェレミー・ベンサムの言葉を引用して返すでしょう。」
――システムと言うより、巨大な監獄では?
パノプティコン…一望監視施設の最悪の発展形、最小の人数で最大の囚人をコントロールする……
琥珀色の瞳が、からかうような笑みを含んでこちらを見る。