#28 透明な影
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
コーヒーの香りに誘われるようにして入ったキッチンは、音に満ちていた。
「寝てないのか。」
「次に槙島が何をするのか…その行動予測が、なかなか上手くいかなくて。」
二度目の欠伸はなんとか噛み殺して応え、皿から取った林檎を投げ上げる。
「やはりあの男が、もう一度何かしでかすと?」
「後5日で、首都圏のセキュリティネットワークが完全復旧する。刑事課の分析官から仕入れた情報です。槙島にとって、それが最後の花火を上げるタイムリミットになるでしょう。」
「コーヒーが淹れてある」との声に外に向けていた視線を、戻す。
「本物の豆だからめちゃくちゃ濃いぞ。」
「……ありがとうございます。」
**********
「お前が持ち出してきた資料には目を通したよ。」
今朝採られたばかりの野菜を口に運んでいた手を休め、目を伏せる。
「成る程、苦戦するワケだ。」
「…雑賀先生の印象は?」
「シビュラシステム運営下に政治犯というものが存在するとすれば、あの男のことだろうな。」
そう言って味噌汁を啜るのを見つめ、自分も食事を再開させる。
「テロリスト…アナーキスト、アジテーター。民衆に興味の無い自殺願望のある革命家。どの道ロクなモンじゃない。ところでアナーキズムの定義とは?」
「支配と権力の否定です。ただ、混乱と無秩序という意味ではない。」
「そうだ。非人間的な支配システムの否定、より人間的なシステムの構築…槙島はアナーキストに近いが、彼ほど破壊を好むとなると、本来の語義から大分離れる。」
「非人間的な支配システム……すなわちシビュラですよね?」