#28 透明な影
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どこか遠くで、鳥が羽ばたく音。
「………」
素早く廃莢し、次弾を装填――構える。
一連の動作を繰り返し繰り返し行い、体に叩き込む。
そうしてようやく満足いく感覚が得られたのを認め、身支度を整える。
とは言っても必要最低限の荷物をバックパックに詰め込み、いつものスーツの上からライダースを羽織ればそれでお終い。
白い息が浮かぶ早朝の中、階段を下りていく。
埃っぽいガレージの中に鎮座している、一台の旧型バイク。
見た目に反してその状態がかなり良好な事は、もう確認済みだった。
「遠慮なく借りるぜ、とっつあん。」
ヘルメットを被り、エンジンに火を入れる。
出来る事なら全てが終わった後に、また。
車の少ない高速道路に乗り入れ、朝靄の中を走り出す。
服越しに肌を刺す、冷涼な空気。
生まれては過ぎ去って行く、風。
曙光が背中に、仄かに、今。
噎せ返るような自由と生とそして多分、死の匂いに満たされるのを感じる。
「………」
叫びだしたい衝動を堪える代わりに、アクセルを、踏み込む。