#03 飼育の作法
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室内に響いていた引き出しを探る音が、ややあって止まる。
「こちらが施設内の全職員のサイコパスになります。定期診断の詳細値と、常設スキャナによる色相判定の記録です。」
「お預かりします。」
「確認していただければ分かることですが、継続して規定値を逸脱している職員は一人もいません。」
耳に纏わりつくような声を聞きながら、施設内の映像を流す無数のパネルを眺める。
「殺人を疑うにしても、まず容疑者がいませんよ。」
「それはこちらのデータをシビュラシステムで分析してみるまでわかりません。それ相応の時間がかかります…」
データを早速スクロールしているらしいギノの横でオレンジに染まる後ろ頭を見て再び、目を戻した。
「だが、より簡単に調べる方法もある。……ドミネーターです。」
今や一般市民にも浸透している裁きの銃の名に、主任が微かに息を呑む気配が伝わる。
「一度全ての職員を電波暗室の外に出し、こちらの機材でチェックさせて下さい。」
「しかし、それではこちらの業務に支障をきたす。」
『事は人命に関わる問題ですよ?』
「…塩山君の一件が殺人事件であるという証拠を提出して下されば、勿論当方も協力します。ですが現状、あれは事故と判断するしかない。」
靴音にかき消された、短い罵り。
「こちらの業務を阻害してまで職員の取調べを行うのであれば、まずは経済省を通して業務計画の変更手続きをお願いします。」
ソファまで進めた足を止め、黙したまま座す二人の上司に目をやる。
「………」
最後の残滓を放つ太陽が、沈もうとしていた。