#26 鉄の腸
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「機械の部品に成り果てろと言うのも、ゾッとしない話だな。」
「勿論、これは君の固体としての自立性を損なう要求ではない。現に僕は今もこうして藤間幸三郎としての自我を保っている。君はただ、一言YESと頷いてくれるだけでいいんだ。ここにある設備だけで、厚生省に向かう道すがら外科的な処置は完了する。槙島聖護という公の存在は肉体と共に消失するが、君は誰に知られる事もなくこの世界を統べる支配者の一員となる。」
「…まるでバルニバービの医者だな。」
衣擦れの音が微かに響き、瞼を下ろす。
「なんだって?」
「スウィフトのガリバー旅行記だよ。その第三篇…ガリバーが空飛ぶ島ラピュータの後に訪問するのが、バルニバービだ。バルニバービのある医者が、対立した政治家を融和させる方法を思いつく。二人の脳を半分に切断して、再び繋ぎ合せるという手術だ。これが成功すると、節度のある調和のとれた思考が可能になるという…。この世界を監視し、支配する為に生まれてきたと自惚れている連中には、何よりも望ましい方法だと、スウィフトは書いている。」
「…聖護くんは皮肉の天才だな。」
「僕ではなく、スウィフトがね…。」
ジャッと音をたてて翻ったカーテンに、藤間の意識が刹那こちらに向けられ
その横面を本の背表紙が叩いた。
「!」
両手で提げたモニタリング装置を振り切ると細い体が横様に倒れ、裂けたこめかみから微量の血液が飛び散る。
「――う゛っ」
掌から零れ落ちたドミネーターに伸ばそうとするその肘に膝で着地して動きを封じ、人工皮膚に指を這わせる。
「場所が分からない内は抵抗しないと考えたんだろうが、相変わらず君は詰めが甘い。」
『……感情が、あるのね…』