#26 鉄の腸
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開いた目に、白に近い色の滑らかな天井が映る。
ゆっくりと、上体を起こす。
気配を感じたのとほとんど同時に、横手から声がかかった。
「久し振りだね聖護くん。」
「変わりないようで何よりだ」とソファの上で読んでいた本を閉じた初老の女性が、こちらを向く。
「公安局局長、禾生さん…だったかな。面識は無いと思うが。」
ベッドに手をつきながら、眼球の動きだけで軽く室内を探る。
「ま。この3年で僕はずいぶんと様変わりしたからね。早速だが、君に謝らねばならない事がある。」
ベッドの端を廻りこんで歩いてきた禾生が、携えていた本を差し出す。
「以前君に借りた本なんだが、色々と身辺がごたついたせいで紛失してしまってね。」
深いボルドーの装丁を施された、古そうな一冊。
「!」
「同じモノを探すのに苦労したよ。」
マルキ・ド・サド、”悪徳の栄え”――
記憶の中。
少しばかり前に出会って別れた筈の青年が
「驚いたな…」
こちらを振り返って
「君は、藤間幸三郎なのか。」
笑った。