#26 鉄の腸
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「……私達、勝ったと言えるんでしょうか。」
ポツリと零し、傷口の縫合された太腿に目を落とす。
「刑事の仕事は基本的に対症療法だ。被害者が出てから捜査が始まる。」
送られてきた情報では、死亡者およそ2000人。
負傷者はその数倍、サイコ=ハザードによるメンタル被害は少なく見積もって数万人に及んでいる。
「そういう意味ではハナから負けている。だが負け試合をせめて引き分けで終わらせる事は出来た…。それだけで良しとするしかない。」
「結局、シビュラシステムの安全神話って何だったんでしょうか。」
「安全、完璧なんて社会はただの幻想だ。俺達が暮らしているのは今でも危険社会なんだ。」
「危険…」
「便利だが危険なモノに頼った社会の事さ。俺達は政府によってリスクを背負わされていた…しかしそれが巧妙に分散され分配されていたので誰も気づけなかった。いや……気づいても気づかなかった事にした。誰もが目を逸らしていたのかもしれない。危険が確かにそこに存在するが故に、逆に存在しないモノとして扱わないと正気が保てなかった。」
[無い]筈の[在る]もの。
理想郷でも何でもなかったこの街。
でもそれを、知らなかった。
本当に?
「この街の市民は、そこまで器用だったでしょうか。私も含めて…」
言いようのないこの感情は自己嫌悪と呼べるようなモノですらなくて。
ただ、悲しかった
とても。