#25 裁きの門
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糸鋸を振り下ろす腕ごと止めた狡噛が、堪えきれないと判断したらしく勢いを殺さずに後方へと下がる。
両手で振るった刃を避けられた男の鳩尾にドミネーターを突き込まれ、宙を流れるその頭にさらに的確な回し蹴りが叩き込まれる。
ホログラムを割って空へと飛び出したヘルメットは最早、機能を失っていただろう。
摩天楼に吐き散らされたバラバラ死体を幻視しながら、螺旋階段に足をかける。
「その傷でよくやるもんだ。」
”殺意”を具現化するとしたならば恐らく、こんな風なのだろう。
「…お前は狡噛慎也だ。」
「…お前は槙島聖護だ。」
<犯罪係数、0。トリガーを、ロックします。>
向けたドミネーターが告げる託宣を予想していたのか、狡噛が僅かに顰められた顔のままでそれを腰のホルスターにしまう。
「正義は議論の種になるが、力は非常にはっきりしている。その為、人は正義に力を与える事が出来なかった。」
「…悪いな。俺は、誰かがパスカルを引用したら用心すべきだと、かなり前に学んでいる。」
「ハハハッ、そうくると思ってたよ。オルテガだな。」
自分の足裏が立てている筈の硬質な音が何故か、少し遠い。
「もしも君がパスカルを引用したら、やっぱり僕も同じ言葉を返しただろう。」
「貴様と意見が合ったところで、嬉しくはないな。」
「そうかい?でも、彼女はパスカルを好んでいるようだったよ。あるいは、その逆なのかもしれないが。」
固有名詞を排除した物言いに、端整な顔が分かり易く、歪んだ。