#03 飼育の作法
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けほっと小さく咽る音、その後ろの、無残に凹んだダンボール。
落ちた沈黙が、耳に痛い。
どうして私は、こうなんだろう。
額に手をやって手首に顔を預けた時、風のかき回される音に混じって届いた、声。
「あまりギノをからかってやるなよ。」
どこまでもいかにも、上から見えていますというような言い方は
「色恋どころか、話す女なんて六合塚と唐之杜くらいだ。」
だけどどこか、子どものような楽を含んでいるような気がして。
『………』
窺い見ると、画面を見つめていたその顔がこちらを向く。
厚く広がった雨雲の隙間から掛けられるあの橋は、誰のためのものなんだろう。
その瞳の色に、風景よりも何故か遠い昔に生じた疑問の方を先に、思い出した。
ただ一度、痙攣しかけたみたいに微かに動いた目元に知らず、目を瞬く。
何も言えないでいる内、気づけば薄青い光を浴びる、精悍な横顔を見ていた。
「煙草は、嫌いか。」
あまりに静か過ぎる問いに、それが自分に向けられたものであると知るのに手間取る。
『好きでは、ないです…』
「そうか」と短い相槌を最後に、途切れる会話。
再び見始めた画面を切り替える頃になって初めてまた、謝りそびれたことに気づく。
それでも不思議と悔やむ気には、ならなかった。