#24 硫黄降る街
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「この5年間、俺はシビュラシステムの実態を掴む為に血眼になってきました。」
運転席に着いたグソンが、ふいに口を開いた。
そういえばいつもより口数の多い彼はもしかしたら緊張しているのかもしれないと思うと、多少微笑ましい気分になる。
「首都圏各地に設置されたサーバによる並列分散処理。鉄壁のフォールトトレラントを実現した理想のシステム…それが厚生省の謳い文句です。まァ実際、全国民のサイコ=パスを測定し、分析するともなれば膨大な演算が必要となる。当然、ネットワークを経由したグリッドコンピューティングでもしない限り追いつかない。」
高速道路を行く車の進行方向に見えてくる、巨大な塔。
ホログラムで飾り立てられた、その姿。
「ところがね、検証すればする程、データの流れが明らかにおかしい。街中のスキャナ、公認カウンセリングAI、そしてドミネーター…一見グリッドを巡り巡っているかのように見えたデータが実は全てたらい回しにされているだけだった。そこでようやく気づいたんです。シビュラを巡る全ての通信が必ず一度は通過する中継点が、ただ一箇所だけ存在する事に。もしそこに誰も知らないスタンドアローンのシステムが隠されてて、全てのシビュラの処理演算をソイツ一機が賄っているのだとしたら、全て辻褄が合うんです。」
「…やはり君は天才だね。」
「まァ不可解なのはその性能ですよ。もし孤立したシステムだとすると、ソイツは既存の技術では説明のつかないスループットを発揮している事になる。そもそも一箇所に集約している意味が分からない。保安上のリスクを考えれば、どう考えても危険すぎる。」
「あるいは、敢えて危険を犯してまで秘匿性を保ちたいのだとしたら。」
「そういうコト。ここまで胡散臭いとなるとね、もう確かめなきゃ気が済まなくなりますよ。シビュラシステムの正体ってヤツを。」
「そして、君が確かめた問題の施設がここか。」
停車した車から降りた男達が、それぞれに武器を持って歩みを始める。
「サイマティックスキャンで収集されたあらゆるデータの中継点。おまけにこの辺りの消費電力、明らかに偽装されてる形跡があります。ほぼ間違いなくシビュラシステムはこの厚生省本部、ノナタワーの中にある。」
「さァ、それでは諸君。ひとつ暴き出してやろうじゃないか。偉大なる神託の巫女の腸を。」
振り上げられたチェーンソーが、警備用ドローンの首筋に唸りを上げて迫る。