#03 飼育の作法
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残り二本では、休憩どころか拷問になってしまう。
念のためライターの感触を背広のポケットに確かめたところで、足を止めた。
クリアガラスのあちら側で向かい合う、二人の男女。
両者の距離は極端に近いが、流れる雰囲気はそういった類とは、むしろ真逆。
ややあって男の方が身を翻し、こちらへと向かってくる。
「……悪いが、先に休ませてもらう。」
了承どころか自身の言葉すら言い終わらない内から歩き去っていくその背にひとつ目を瞬けば今度は、ボコッとくぐもった音が横から響いた。
止めていた歩みを再開してドアをくぐり、デスクに向かう途中視界に入った、ダンボール。
太字で印字された公安の文字は、歪みまくって読み取りが難しい。
『はい、こちら一係……今席を外してます。後ほどまたお願いします。』
斜め右前方に座している女の声だけを聞きながら、唇に煙草を挟む。
流れる紫煙を横目に画面を立ち上げた時。
『発がん性の高いジメチルメトロソラミンは主流煙が5.3から43ナノグラムであるのに対し』
タッチパネルを無造作に弾いた細い指が、黒飴の包みを解く。
『副流煙では680から823ナノグラム…キノリンの副流煙に至っては主流煙の11倍、およそ18000ナノグラム。』
「………」
『殺す気ですか。』
ファンの回る音までが、攻撃的な響きを含んで聞こえた。