#24 硫黄降る街
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「落ち着かないかね?」
多少微笑ましい思いでそう口にすると、「そりゃあ、ね」と苦笑混じりの返答が返ってくる。
「不安にもなりますよ。果たしてこの先に何が待っているのか、この街がどうなってしまうのか。」
「…君のそういう普通なところ、凄くいいと思う。」
持ってきてくれた紅茶に手を伸ばし、一口啜る。
「僕も君も、ごく普通の本質的にありきたりな人間だ。」
言って窓外を向き、薄曇の空から射す白い光を眺める。
「自分の事を欲張りだと思ったことはないよ。当たり前の事が、当たり前に行われる世界。僕は、そういうのが好きなだけでね。」
「ごく普通でありきたりな我々が、普通でない街に犯罪を仕掛ける…。」
「”普通でない街”か…なんだろうな…。昔読んだ小説のパロディみたいだ。この街は。」
「例えば…ウィリアム・ギブスンですか?」
「フィリップ・K・ディックかな。ジョージ・オーウェルが描く社会ほど支配的でなく、ギブスンのが描くほどワイルドでもない。」
「ディック、読んだことないなァ。最初に一冊読むなら何がいいでしょう。」
「”アンドロイドは電気羊の夢をみるか”。」
「古い映画の原作ですね?」
「大分内容が違う。いつか暇な時に比較してみるといい。」
浸したマドレーヌを口に放り込み、立ち上がる。
「ダウンロードしておきます。」
「紙の本を買いなよ。電子書籍は、味気ない。」