#24 硫黄降る街
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「数十件…いやぁ……数百件…まだ増えてる…。」
ネットの動画サイトから漏れた硬い、けれど湿った音に被せて、征陸さんが呟く。
匿名配信され続ける、藤井博子殺害や現金輸送車襲撃の場面。
削除してもすぐに再びアップされるその動画上を、夥しい数のコメントが流れていく。
「凶暴性の伝染…サイコ・ハザードがここまで大規模に……」
「そんなお上品なモンじゃない。ここまでくりゃあ暴動だ。」
「エリアストレス上昇もエライ事になってる。暴れてるのはヘルメットの連中だけじゃない。怯えた市民があっちこっちで集団暴行を引き起こしている。」
画面の中。
どこかの路上に倒れた若者を、数人の人間がバットやゴルフクラブでめった打ちにしている。
拡散され続けるこの情報が何者かの手によって選別され、歪められ、発信されているのは一目瞭然だ。
情報の真偽を確かめる事の出来ない中で、精神が追い詰められていく。
恐怖が常識的な判断能力を曇らせ、防衛本能が攻撃性を急激に高めていく。
状況への適応と淘汰。
無慈悲な進化論の究極。
けれどこの裏にいる男は多分きっと、それを示したいわけではないのだろう。
「禾生局長より緊急招集だ。非番の人員も含め、刑事課に総動員指令が下った。」
言うなり立ち上がり、風を切って室内を出ていく宜野座さんに習い腰を上げる。
『………』
噛んだ唇に、鉄の味がのった。