#23 甘い毒
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<市民の皆さん。こちらは――>
伊藤の背に視線を据え、ただ足と腕を動かす事に集中する。
開いたドアにぶつかるようにして方向転換し、隣のブロックへ。
整備工場を思わせる天井の高い倉庫内へと駆け込んだ伊藤が足を止めるのが見え、足を速める。
とそこでようやく罠にかかった事に気づいたのだろうが、もう遅い。
更に奥へと通じるドアの隙間に爪を立てるのを見ながら、追いついてきたとっつあんと共に銃口を向ける。
<犯罪係数、282。刑事課登録執行官。「くそぉぉおおお」
任意執行対象です。セーフティを解除します。>
自棄になって突っ込んでくる伊藤に絞る照準に合わせて、視界隅に自身の顔写真が表示される。
「…そりゃどぉも。」
奔った二対の青が、その顔面にぶち当たる。
もんどりうって倒れた伊藤に無言で近寄り、そのヘルメットを毟り取る。
「282って…お前……」
「ああ…。ついぶち殺してやるとか思って。」
手錠を取り出そうと懐を探りながら、口を開く。
「自分のサイコ=パスを撃たれた感想はどうだ?」
「コイツがエリミネーターに変形しなくて良かったよ」とすでにホルスターに収めたそれを叩きながら肩越しに振り返った目に、呆れたような笑みを浮かべたとっつあんが映る。
と、その後ろで開いたままの倉庫扉の前に駆け込んでくる光と常守が見えた。
こちらを見つめながら息を整えるその手に握られているドミネーターが板についているようで、でもやはりどこか、冗談みたいで。
胸を満たしていた空虚な圧迫感が急速に、抜けていく。