#23 甘い毒
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<こちらは公安局刑事課です。現在、このエリアは…>
「被害者の名前は藤井博子…」
「繁華街のど真ん中とはなぁ…この街は一体どうなっちまったんだぁ?」
ドローンに囲まれた輪の中でしゃがみ込み、苦々しげに呟く征陸さんの足元にはビニールシートのかけられた女性死体。
「…薬局襲撃犯と同じ犯人でしょうか。」
「可能性は高い。…それにしても…これだけの人間がいたのに、案山子かコイツ等は!」
煌びやかなネオンサインの灯る道を行く通行人に目をやった宜野座さんを見て、眉を下げた。
確かに目隠しのホロの向こうを歩く人々は当然だが、それぞれに平和な夜を楽しんでいる。
羨ましくないと言えば嘘になるが、だからと言って向こう側に行きたいとも、思えない。
「目撃者の証言は似たり寄ったりです。何が起きているのか、理解出来なかったと。無理もないと思います。目の前で人が殺されるなんて、想像もつかないし思いもしない。そういう出来事が起こり得る可能性なんて見当もつかないまま、今日まで暮らしてきた人達ばかりなんです。」
「結局誰も事件を通報せずに、エリアストレス警報で異常が発覚したってンだもんなぁー。」
「見過ごしたのは、人間だけじゃない」と狡噛さんが目で示した方向で、色相スキャナが首を回した。
その赤眼がこちらを捉えているのに思わず長く、息を吐いてしまう。
「へぇー。よりにも寄って街頭スキャナの目の前で…じゃあ犯人の色相変化もリアルタイムでモニターされてたわけか?」
「これです」と六合塚さんが飛ばしてくれたデータが受信され、ウィンドウが開く。
スキャナの記録画像と、更にその下には映っている人間達のサイコ=パス色相に加え、エリアストレス推移のグラフ。
「相変わらず正常値のまんまかよ、恐れ入ったねぇ。女を殴る瞬間でさえ、たったこれだけしか変動がない。」
「やっぱ数値そのものがニセモノって可能性は?」
「ないわね。偽のサイコ=パスを捏造するなんて、スパコンでも引きずって歩かないと無理。」