#23 甘い毒
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読んでいた本を閉じ、腰のポケットを探る。
取り出した携帯端末のモニターには、道端で女にのしかかる男の姿が映し出されている。
その下に表示されているデータを確認し、知らず唇の端が上がった。
「短時間で、これだけエリアストレスが上昇…。」
片手に持っていた本を一旦ローテーブルに置き、音声通話画面を立ち上げる。
「お疲れ様。」
”あらかじめ裏切られた革命”
中身は勿論だが、[天使のなかではすべてが清純で悪魔のなかではすべてが邪悪。ただひたすらに人間のなかでだけ、神聖なものと罪深いものとが出会うことができるのだ]という冒頭のエピグラフが特に良い。
「いけるね。計画に修正は必要ない。」
相手の物言いに少しだけ、笑ってしまった。
「バカだな。人が人を殺しているだけだ、大変な事なんてまだ何も起きていない。」
立ち上がり、午後も遅い時間の木立を眺める。
「大変な事は、これから起きる…。」
読書をするのに最適の時間を切り取った、風景。
「なあ…計画を全部伝えてるのは君だけなんだ。頼りにしてるよ。」
通話を終了し、なんとはなしに只のホログラフを見やる。
もしこの場に佐々山光と狡噛慎也がいたらなんと、言うだろうか。
狡噛慎也は「読みたいと思った時に、読むだけだ」と素っ気無い。
佐々山光はきっと少しだけ考えて、自分に同意する。
そして小さく笑って『だけど』と付け加えるだろう。
『私は外で読みたい』と。