#23 甘い毒
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「昔は、玄関に物理的なロックをかけるのが当然だった。まずは他人を疑う事を前提に、秩序を保っていたからだ。」
車窓を流れていく風景を見ながら、ピアスを弄る。
「それ、征陸さんの思い出話ですか?」
「…ああ。あの老いぼれの受け売りさ」と苦々しげに言い放った宜野座さんに口を開く。
『私、今でも寝室には鍵かけてますけど。』
「そう言えばそうだね。」
こちらを振り返って僅かに目を見張った朱ちゃんに口元だけで笑み、また顔を戻す。
さらに言えば窓には鉄格子も嵌っているのだが、そこまで言うとさすがにきっと二人とも、引くだろう。
「今は、誰かを疑ったり、用心する心構えは必要なくなった。道端で会う赤の他人は、全てサイコ=パスの保証された安全で善良な人物…その前提で、この社会は成り立っている。あのヘルメット男の様にサイマティックスキャンを欺く方法があると知れ渡ったら、パニックは避けられん。」
「もしくは、槙島聖護の様な存在が発表されても…」
しん、と音の絶えた車内に鳴った着信音にひとつ呼吸をおいた宜野座さんがパネルを操作する。
「どうした。」
<世田谷区でエリアストレス警報なんだけど…>
気だるい艶やかな声は、唐之杜さんのものだ。
<それはそれとして、ネットにとんでもない動画が上がってるわよぉ。…見て。>
「「『!』」」
ヘルメットを被った男が衆人環視の中、一人の女性に跨っている。
何度も振り上げられるその手には、小ぶりの、ハンマー。
「な、なんだコレは…!」
幻視のその姿に目を、細めた。