#23 甘い毒
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「しっかしよぉー…こんなヘルメットひとつでサイコ=パスの偽装なんて出来るモンなのかぁ?」
「サイマティックスキャンを遮断する…というならまだ分かるわ。勿論その程度の事なら、セキュリティは突破出来ない。スキャニング不能な人物が通過すれば、その時点で警報が鳴るもの。」
『問題は、スキャナがサイコ=パスを検出している点です。』
待合室と調剤室を仕切る強化ガラスに背をつけたまま、向かいを見やる。
「虫も殺せない程善良な、一般市民としての色相判定をな。」
涼しい顔で視線を受け流されるのは予想通りで、周りに悟られない程度には苦笑する。
「クラッキングかなぁ…。」
「有り得ないわね。こんなに短時間で場当たり的な犯行なのに、何の痕跡も残さずデータを改竄するなんて不可能よ。」
「現行のセキュリティはサイマティックスキャンの信頼性を前提に設計されている。だからこそ、サイコ=パスに問題がなければ問題を起こす可能性すらないものとして、素通りだ。」
監視カメラを見上げたままで呟くように言うギノに、室内の視線が集中する。
「実際の傷害も窃盗も、それを犯罪行為と断定出来る機能がドローンのAIには備わっていない。皆対象のサイコ=パスだけを判断基準にしているから…。」
「こんな犯罪に対処出来る方法はもう…この街には残ってない…。」
過去と今を併せ視るような目をした常守を見た光の顔に、影が射す。
『私達がいるじゃん。』
いっそ道化染みた場違いな明るい声が、この少女の本来とは少し違う事は多分もう皆が、気づき始めているのだろうけれど。
『とりあえず証拠洗い、ですよね?』
「ああ」とややあってドローンの提示した検証結果のデータを投影するギノに、常守が習う。
「うん…!」
今度こそおおっぴらに、唇を、歪めた