#23 甘い毒
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「どういう状況だ、これは。」
と、室内を眺め回した宜野座さんが不快そうに顔を歪めるのも、無理はない。
薬局内の調剤室。
清潔な部屋に転がる、口から鋏を生やした男の死体。
そして眼球に突き立てられたボールペンで床に留められたようになっている女性の死体。
証拠を求めて這い回る昆虫サイズのドローンに落としていた目を上げ、口を開く。
『どうもこうも…事件そのものは明快極まりないですよ。』
「犯人は堂々と玄関から入ってきて係員を殺し、好き放題に薬物を奪った後で、平然とそこのドアから出て行った…。」
「一部始終、監視カメラに映ってますよ」とPCを操作していた六合塚さんによって送られてきたデータを開く。
<誰か来てぇッ>
悲痛な声を上げながらこちらを見上げる女性係員に、妙なヘルメットを被った男が近寄っていく。
<助けは、来ない…>
「なんだこのヘルメット。露骨に怪しいじゃん。」
「ただ怪しいというだけで、セキュリティは反応しないわ。エントランスからずっと、この男のサイコ=パスはクリアカラーの正常値なの。スキャナにも記録が残ってる。」
入り口セキュリティの簡易色相チェックと共に表示されるのは、被疑者の一番近い検診の犯罪係数データに目を通してみると、確かに二つが基準値を下回っていない事が確認出来た。
「まるっきりあの槙島ってヤツと同じじゃないスかぁ?サイコ=パスが正常なままで人殺しが出来るなんてー。」
縢くんの発言に、朱ちゃんが一瞬目を険しくし次いで、眉を下げる。
「恐らく、このヘルメットが鍵だろう。サイマティックスキャンを欺く、何らかの機能があったに違いない。常守監視官を出し抜いた、槙島という男も、同じ様な装置を使ったのかもしれない。」
その言葉に宜野座さんの方を向くが、結局何を言うのも止めておく。
ここは朱ちゃんに習うべきなのだとどうしてか、思ったのだ。