#23 甘い毒
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振り返って視線を上げると、やや暗めの灯りを背負った顔に見下ろされていた。
『……使って、いいですかね…?』
食器の在り処を教えるにはいくらか近すぎるその立ち位置を確認して再び目を上げるのと同じくして、その手が伸びてくる。
「…なんで髪、切ったんだ?」
『……気分、変えようと思って……』
極めて自然な仕草でこめかみの生え際を梳いた指先がそのまま、耳のラインをなぞる様にして髪を退けた。
急に見通しと風通しの良くなった左頬に微かにあたる掌はとても大きくて、それだけである種の恐怖感を抱かせる程。
ごくりと生唾を呑んだ自身の喉の動きが、分かる。
草食獣にでもなったような気分だ。
『……狡…噛、さん……?』
「ああ。」
ああって。
無理矢理に笑って身を沈めようとしたタイミングを読んだかのように近づけられた端整な顔に目を瞑る暇なんて、無かった。
軽く、触れるようにされた唇が何かを確かめるように小さく、浮く。
私の反応を見ているのだと、気づいた時にはまた。
今度のはさっきよりもほんの少しだけ、長かった。
「………」
次はまるで鳥が、啄ばむ様に。
囀る様な音がしてもまだ目を開いたままの自分は本当に、どうかしていた。
小さく開いた唇の隙間を通ってきた吐息に身を震わせた、時。
響いたコール音が空気を、揺らした。