#03 飼育の作法
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「ええっ、まだ謝ってないの?」
大きな声に、人差し指を口にあてる。
『なんかタイミング逃しちゃってさぁー。』
「昨日、来たんだよね?」
『だから間をね…』と言葉を濁し、缶コーヒーに口をつけた。
――常守監視官は義務を果たした、それだけだ
いやいや、朱ちゃんだけですかと、思ってしまった。
義務ってまさか、謝罪することですかと聞きたくなった。
しかしどう考えてもガードされた蹴りを入れた自分より、昏倒させた朱ちゃんの方が罪は重い筈。
もしかしたら彼の脳内で、その前の私の狼藉なんて綺麗さっぱり消えているのかもしれない。
あと多分その前の、前の時のことも。
相当頭の切れる人なのだろうが記憶力は人並み…というかこの場合5年も前の一瞬を覚えている私の方が異常なのだ。
「でもね、狡噛さんて話してみたらなんていうかすごく…分かってくれる人だった。分かってくれようとしてくれる、って言うか。」
『…へぇ…?』
「それに今日の当直、狡噛さんとでしょ?話すチャンスはたくさんあるよ。」
『………宜野座さんもいるけどね。』
「あ、そっか」とミルクティーの缶を傾けるその様に、羨望すら覚える。
昨晩の出来事を思い出すと、そんな牛乳成分の入った甘いものは飲めない。
逆流するかもしれない。
「とにかく早く謝っちゃった方がいいよ。」
『………だよねぇ。』
立ち上がってロッカーに手を伸ばす朱ちゃんを見ながら、肩を落とした。