#22 深淵からの招待
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「アンタはシビュラを否定し、シビュラはアンタを否定した…。そして新しい秩序が生まれ、この国だけが立ち直った。」
「ああ…結局は俺が間違っていたのかもしれん。今の時代を認めて、諦めのついた頃合に、俺の犯罪係数は横ばいになった。まぁー、些か以上に手遅れだったが?」
「で?お前はどうなんだ?」と続けられた言葉を、ビル風が捉えて、止まらせる。
「サイコ=パス、ちゃんとクリアカラーで維持出来てるか?」
「アンタに心配される筋合いじゃない。今更父親面しようってのか?」
「出世を控えた上司を部下が気遣って何が悪い。」
咄嗟に詰まった応えを諦め、ビルの谷間に視線を戻した。
「お前が俺にさっき言った通りだ。この仕事に疑問があるなら、何か疑わしいと思う様な事を抱え込んだら気をつけろ。そこから先には、俺のハマったのと同じ落とし穴が待ち構えているかもしれん。」
だらしなくよりかかっていた背中を浮かせ、歩き出したのを見送りながら口を開く。
「アイツも」
「んん?」
「佐々山も、同じか。常守と。」
向けられたその目が、こちらを探るかの様に、凝らされる。
暫しの後の「いや、違うな」と断定的な口調はだが、独り言のような静けさを伴って。
「あの子は…光ちゃんは、違う。嬢ちゃんが刑事という仕事の価値を信じているのと同じ様にあの子は、自分を信じてる…それも、一切の疑いなく。」
「…自分を…?」
「ああ。自分が自分で在る事の価値を、知ってるんだ。…嬢ちゃんとは違う…。例えその在り方を認めてもあの子はそれを、決して赦さない、受け入れないだろう。」
ひどく辛そうなまるで、痛々しいものでも見るかの様な眼差し。
それは自分に向けられたものなのか
「あの子の正義は、あの子自身だからだ。」
それとも。