#22 深淵からの招待
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「お前が俺を呼び出すなんて、こりゃあ明日は雪かな。」
隣に並んで見上げた空は建物に分割されて、相変わらず、狭苦しい。
「明日の降水確率は昼夜共に0だ。」
「昔からある言い回しだろうよ、全く。」
こんな風に会話するのは随分と、久し振りだ。
「で、何があった?」
「常守監視官の事で、幾つか質問が。」
前を見据えた横顔を見て、戻す。
「お譲ちゃんがどうした。」
「何故、アイツの色相は濁らないんだ?…どんなストレスケアを?」
「それを俺に聞くかね。」
苦笑すると、「俺よりは親しく接してるだろう」と更に笑うしかない納得のいく答えが返ってくる。
「分からんよ。まあ、ひとつはっきり言えるのは、お譲ちゃんは自分の犯罪係数を全く恐れていないってコトさ。あの子は、何ていうかその…物事を”善し”としている。世の中を赦して、認めて、受け入れている。」
こちらを真っ直ぐな目で見て、解しようと努めるその姿が何を努力する必要も無く、浮かぶ。
「それでいて危ない橋を渡るのも厭わないんだから、ただ流れに身を任せているわけでもない。…刑事っていう仕事の意味と価値を疑う事なく信じてるんだな。」
「アンタの場合は、違ったって言うのか?」
「俺か?はぁ…そうだなぁ。こんな俺でも、昔はあの子みたいに正義とか言うモンを信じていたような気がする……。ところが、ある日いきなり言葉を喋る銃を渡されて、これからはソイツの言いなりになって人を撃ち、捕まえるなり殺すなりしろと命令された。腹が立ったよ。こんなやり方は、俺が信じた刑事の仕事じゃない…そう思えば思う程、サイコ=パスも曇っていった。」
知らず義手ではなく、生身の右手に力が篭る。
「そこまで疑問があったなら、どうして刑事を辞めなかった。アンタはそんな不本意な生き方の為に俺を…母さんを巻き添えにしたのか?ふざけやがって…今更どの面下げて泣き言をほざくんだ。」
「全くだよ。嫌だ嫌だと言いながら、結局今でも刑事のままだ。」