#22 深淵からの招待
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「失礼します。」
言いながら敷居を跨ぐと、まるで温度の違う二対の眼差しがこちらに向けられる。
『朱ちゃん。』
映画を見ていたらしい光ちゃんがむしるように耳からイヤフォンを外すのに笑み、狡噛さんを見る。
「読書ですか?」
「ああ…わざわざすまない。」
「いえ。」
持ってきた差し入れを脇机に置き、鞄をしょい直す。
「どうせ私も少し休めって言われてますし…」
観察するような視線に、目を瞬く。
「葬儀の方は?」
「一昨日に。」
半分無意識に光ちゃんのベッドの端に腰掛けながら、思い出す。
ポニーテールを揺らして振り返っては笑う、ゆきの遺影。
むせび泣くゆきの両親や親族、そして、佳織。
火葬炉に呑みこまれて行く柩を見つめながら溢れた涙を、零す資格なんて無かった。
「…そうか。」
「すみません。」
『どうして謝るの。』
「槙島聖護を取り逃がした。」
『朱ちゃんの責任じゃない』と間を置かずに言い切った声に噛んだ唇が、苦く、香った。