#21 Devil's crossroad
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『”赤と黒”ぉ?』
すっとんきょうな声に集中を切られ、隣に目をやる。
寝転んだままの佐々山が何故か不服そうな顔つきで、こちらを見ている。
一眠りして少しは回復したのだろう、白かった顔に血の気が戻ってきていた。
『狡噛さん…。もっとカッコいいの読みましょうよ。分かり易いやつ。』
「…例えば。」
『ん~…”ロング・グッドバイ”とか。”I suppose it's a bit too early for a gimlet”って――知りません?』
「随分渋いモノを読むんだな。」
思わず苦笑し、読みかけの頁を下にして本を置く。
『意外?』
微量の媚を帯びた笑みと口調に面食らい、咄嗟に何も返せない。
『……ホランドが教えてくれた。小難しいのを読むと小難しい奴になる。ナヨっちいものを読めばナヨっちい奴になる。イカした奴になりたければイカしたやつを読め、って。』
「……”ロング・グッドバイ”も?」
『はい。でもこれは、雑賀先生も好きだって言ってましたよ。』
くしゃくしゃの髪もそのままに仰向いた佐々山が、ふいに笑う。
『でもジュリアン・ソレルは、嫌いじゃないかな。しょーもないけど。』
「…初めてだな。」
『?何がです?』
きょとんと目を瞬くのに、知らず目元が緩む。
「お前の、好きなものだ。いや、嫌いじゃないもの、か。」