#21 Devil's crossroad
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「報告書は読んだよ。」
禾生局長の手の中のルービックキューブが高速で回転し、制止する度に何色かの光が点滅する。
どういったルールで以って成り立つゲームなのか、全く想像出来ない。
「常守監視官の証言だが、あれは本当に信憑性があるのかね?」
「現場検証は入念に行いました。…対象までの距離は8m弱、被害者との位置関係も明白です。犯行は明らかに常守監視官の目の前で行われ、そしてドミネーターは正常に作動しなかった。」
「被害者は常守監視官の親しい友人だそうじゃないか。動転してドミネーターの操作を誤ったのでは?」
極めて抑揚に乏しい口調に合わせて出来るだけ、感情を排して答える。
「彼女はそこまで無能ではありません。」
「経験が足りてないと、以前君の報告書にはあったが。」
「だとしても、素質は本物です。監視官としての彼女の能力は、シビュラシステムの適正診断が証明しています。」
「そのシビュラの判定を疑う旨の報告を、君達は提出しているわけだが。」
何が、言いたい――
巡らせかけた思考が、鋭利な刃物のような視線によって断絶される。
「宜野座君。この安定した繁栄、最大多数の最大幸福が実現された現在の社会は、一体何が支えていると思うかね?」
「それは…厚生省のシビュラシステムによるものかと。」
「その通りだ。」
一際強い光を放ったキューブが、沈黙する。
「人生設計、欲求の実現…今やいかなる選択においても人々は思い悩むより先にシビュラの判定を仰ぐ。そうする事で、人類の歴史において未だかつてない程に豊かで安全な社会を我々は成立させている。」
腰を上げた局長がデスクへ向かうのを見て、それに習う。
「だからこそ、シビュラは…完璧でなければなりません。」