#21 Devil's crossroad
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「何だって?」
そう言って温厚そうな目を瞬いた男性は、初老にさしかかるかかからないかといったところ。
かつての超大国の見る影もないここ合衆国マイアミにおいて、唯一にして最高学府の一室。
鉄格子で覆われた室内には、初秋の午後の濃い匂いが満ちていた。
『暫く、Lv.6で一人暮らしすることにしました。家ももう借りたの。いい所です、ペットが飼える。』
目を白黒させているのをしばし見つめ、鞄をしょい直す。
『今日の講義、面白かったです。先生にやり込められた時のヤイールの顔ってばなかった。多分皆、暫くネタにします。ではまた来「光!」
妙に流暢な日本語でもって名を呼ばれ、立ち止まる。
向けた目が合うと、豊かな口ひげが溜息に震えた。
「……親御さんは?なんと?」
すでに答えの分かりきっているだろう問い。
この人ともあろう者が、何故そんな愚かしく生産性のない事をするのだろう。
と、頭でっかちなただの子どもに過ぎない私は思う。
『母には、課題が忙しいと誤魔化してます。父には…会っていません。』
「先週、Lv.6の賭博場でstatesに補導されかけたことは?」
思わず目を見張ると、さっきよりも大きな溜息が室内に落ちた。
「君を捕まえ損ねたホランド・ノヴァクは、私の友人だ。”全身黒ずくめ”の日本人の小娘を知ってるかと連絡があったよ。Lv.6をバイクで流すなんて図々しく且つ傲慢でいけ好かない”マセガキ”。と、これはもちろん彼の言い分だがね。」
「一体いつ免許を取得したんだ」という彼自身の小言には聞こえない振りをし、頭を下げて敷居を跨ぐ。
「光」
振り返って見たその顔には、紛れもない優しさと哀れみが浮かんでいた。
「孤独は決して武器には成り得ない。守るべきだと感じた時点でそれはすでに、ただの弱さだよ。」