#20 聖者の晩餐
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「でっ、出来るわけない…だって…貴方は……」
あってはいけない事。
[無い]筈のものが[在る]という事を失くす事。
ガタガタと震える手でドミネーターを掲げ続けるその盲目的な崇拝の仕方は何も、彼女に限った話ではない。
「善良な市民だから、かね?」
取り出した剃刀の刃に、軽く触れる。
刃物特有の無機質で、冷たい鼓動に。
「シビュラがそう判定したから…」
「あ゛あああああーっ」
けたたましい悲鳴が空間に、木霊す。
<犯罪係数、32。執行対象ではありません。トリガーを、ロックします。>
「ど…どうして……?」
「何故かは僕にも解らない。子どもの頃から不思議だったよ…僕のサイコ=パスはいつだって真っ白だった。ただの一度も曇った事はない…」
鮮血の流れ出る白い背中にかかる髪を手に取り、弄ぶ。
「この身体に流れるありとあらゆる生体反応が、僕という人間を肯定しているんだろうねぇ。これは健やかにして、善なる人の行いだ、と。」
刃をあてて流すとその度に、細い髪がまとまって梳き切れていく。
「やめて…助けて……朱ぇッ」
「ゆきィッ」
「君達では、僕の罪を測れない。いや……君では、と言うべきかな?」
未だドミネーターを構え続ける常守監視官から視線を外し、右方向へと流す。
「僕の罪を裁ける者がいるとしたらそれは、自らの意志で人殺しになれる者だけさ。」