#02 成しうる者
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「迷うことなく、疑うことなく…命じられたままに獲物を狩る習性が、俺の手には染みついちまってる。」
広げた掌に重さを感じなくなったのは、いつからだったろうか。
思い出すことができないほど遠い昔のような気もすれば、つい昨日からのような気もする。
しかしそんなことは大した問題じゃないと、今この時まで思っていたということだけは確かで。
「あの銃の言いなりになって、何人もの潜在犯を撃ってきた…それがこの社会のためになると、小奇麗な理屈を鵜呑みにしていつの間にか考えることさえなくなった。」
握りこんだ指先を解き、顔を戻す。
「自分がやっていることが何なのか、省みることさえ忘れていた。」
アイツは、どうだったのだろうかと考えてみる、ことさえ。
思わず苦笑し、目を閉じる。
今の自分のこのザマを見たら、何と言うだろう。
何と言って、どんな笑みを
「馬鹿な話だ。刑事ってのは誰かを狩りとる仕事じゃなくて、誰かを守る仕事だった筈なのにな……。」
浮かべるだろう。
刹那脳裏で重なる、強い怒気を孕んだ、明るい瞳。
「狡噛さん…」
掠れたような声で名を呼んだ監視官に目を向け、その顔を見つめる。
「アンタは、何が正しいかを自分で判断した。役目より正義を優先できた。」
自らを信じ、自らの正義を実行する。
それができる人間が今この都市に、どれだけいるだろう。
「そういう上司の下でなら、俺はただの犬ではなく刑事として働けるかもしれない。」
みるみる潤んでいく大きな瞳に知らず、笑った。