#16 琥珀色の記憶
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「どうでした?」
扉を開けるなりそう尋ねてくる常守に笑いながら、助手席に腰を落ち着ける。
小一時間以上待たされた事に微塵も言及しないその懐の深さには、敬服する他なかった。
「どうも。」
「…どうも、って…もう2時間になるとこだったんですよ?どうもって事はないでしょう。」
「………」
珍しく眦を上げて睨んでくるのに後ろ頭で手を組み、シートに背を預ける。
「雑賀先生、随分心配してらっしゃる風だったじゃないですか…。」
横目でこちらを見ながら常守が操作すると、指示を受けたAIが車を動かす。
「何をやらかすか分からないって……ていうか狡噛さん、知ってたんですか?光ちゃんのご両親のこと…」
ためらいがちな問いかけに、煙草を取り出して口の端に銜える。
「いや。だが、一度家族と国外に出た人間が独りでこっちに戻ってくるなんて、その時点で残してきた人間とは死別するようなもんだろう。」
分かり易く眉を下げて黙り込んだのを横目で見やり、目を閉じる。
「……アンタにはまた、話すこともあるんじゃないか。」
「女同士だ」と続けた言葉が、「えっ」と唐突な声と被さる。
「ホントですか?光ちゃんがそう言ったんですか?」
喜色に満ちた表情を見返し、瞬く。
「いや…そういうわけじゃないが。」
「なんっ…なんだぁ~もぉ~…。」
「……スマン。」