#16 琥珀色の記憶
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三本目に火を点けて、煙を吐く。
西の空に浮かぶ雲の底に色がつき始めているのが見え、室内を振り返る。
相変わらず、膝を抱えてソファの隅で丸くなっている佐々山に頭を掻きながら敷居を跨いだ。
『………先生には、謝ります……唐之杜さんにも……』とぐすぐす言うのに失笑しかけ、はたと思い当たる。
「………」
伏せられていた顔が上がり、泣き腫らした瞳が子供っぽく瞬く。
が、不意打ちに覗いた幼さを鑑賞する間もなく柳眉が顰められる。
『……さっき言ったことは本心です。悪いとは思ってません。』
「勝手にしろ」とでかかった言葉を飲み込んで隣に腰掛けると、何故か距離を取られた。
「………」
ふいっと視線を逸らして口を尖らせるのをしばし眺め、携帯灰皿に煙草を押し付ける。
「……とにかく、無茶な行動は慎んでくれ。今行動を制限されるような事になれば、奴は…マキシマはまた、遠ざかる。それは、お前にとっても望ましい展開じゃない筈だ。」
無言の抗議を受け流し、立ち上がって椅子の背に引っ掛けていたジャケットに手を伸ばす。
「…それに、これは俺の勝手だが、もしお前まで降格処分なんてことになったら俺は佐々山に…アイツに顔向けが出来ない。」
室内に流れていた空気が、吹いてきた風と同じ強度と速度でもって、変わっていくのが、分かる。
……確かに、そっくりだ。
情に厚く、ほだされ易い。
『……どうやって来たんですか、ここまで。』
「常守監視官が、突然この辺りを巡回したいと言い出してな。お供させてもらった。」
ドアノブに手をかけ、外へと踏み出そうとした背中にかかった声に、振り向く。
『ありがとう。』